水より烏龍茶

日々思いついたことや考えたことを書き散らす

リズと青い鳥を「目撃」してしまった話

なにかとTLで話題になっていた「リズと青い鳥」ですが、映画館で見たほうがいいよと強く勧められたので上映終了ギリギリだったのですが見に行ってきました。良い作品でした。純度が高い。

 

見終わって一発目の感想が「これは一回ポッキリの作品だ」でした。

もちろん何回か見に行ってちょっとした仕草とか演出、メタファーの存在に気づいたりだとかそういうものはあると思うし、そういう楽しみ方もあるなって理解はするけどこれは初見で何を拾って、何をこぼしてしまうのか。というところ含めての作品だと思った。

僕は現実では鈍感でオタクで女心なんてちっともわかりやしないけれども、何故かこの進路を決める直前の女子高生という生き物は多分、人生で一番繊細で純粋で脆くて、そして強くて毅然としたものなんだと思う。フィクションだからその部分が増幅させて描かれてはいると思うけど現実もたぶん、そうなんだと思う。なんとなくハッとさせられる凛とした部分を感じる時がある。

忘れてしまう前に印象的だったシーンをいくつか。

●フルートの光の反射、なんとなく希美がみぞれを意識している良い演出だなと思いました。

●希美がみぞれとの距離が少しずつ分からなくなっていくところ。とても繊細にかつ丁寧に積み重ねて描いているなあと感じました。ああいうのは何かきっかけがあって起こるもの、というよりかはどちらかが最悪手じゃないんですけど踏み外してじくじくと広がっていくいやな感じなんですよね。ボタンを掛け違えてしまった、というか。みぞれは希美のことを手放したくないという気持ちの描写の多さ、ビジュアルも含めて脆さをイメージしやすいですが好きなものに対しての意思の純度が高いんですよね。一度部活を辞めてしまった希美に対しての不安や恐れはあるものの、今度は絶対に。という意思がそこにあって、それが暗すぎない好意の支えになっているのかなと。

●最後の方のシーン。理科室。

演奏のシーンがあってからのアレですが、あそここそ本当に純度が高くて汚れを知らないというか、完全なプライベートな空間を「目撃」してしまったような感覚に陥ったシーン、あれは衝撃的だし印象に残った人も多いのでは。

色々と言葉にするのも安っぽくなっちゃう気がして嫌なんですが、貴女にとっては普通かもしれないけれど私にとっては全部特別っていうの、マジで好きなんですよね。

与えた人間というのはそれが当然になってしまっていて結構その行為自体に何も感じなかったりして、あまり特別扱いしない(他人にも与えているのでその人にとっての大きさを推し量れないということもある)のだけれど、そこをあの場で、ブレずに伝えて、引き出したのがみぞれが青い鳥である所以なのだろうなあと思いました。

 

リズと青い鳥の童話の話は結構じわっと涙がにじんじゃったんですが最後の方の理科室のシーンは泣くというか、すごくきれいで繊細できわめてプライベートな現場を覗き込んだというような、そういう衝撃のほうが強かったです。呼吸が止まりました。

それと、高校を卒業してまあまあ経つので学校感とか、音楽をモティーフにした作品なので当然なんですけど、どこかしらで生の楽器の音が聞こえてくる空間っていうのはほんとに良いなあと思いました。やっぱり楽器に対しての憧れは忘れることができないし、一度はしっかり打ち込んでおきたかったなあと思ったりもします。

見に行って!とかこれいいから!ってオススメする人すげーなって思いました、僕はこれを人にオススメするってできないなと、というかしたくないなと…。

良い作品って誰かと話したくなるんだけど、そういうのじゃなくて自分の中でひっそりと秘密にしておくような作品でした。個人的主観の話だしこうやって感想を書いて公開してるんだから矛盾してるじゃん、というとこなんですが久々に綺麗すぎるものを食らってしまって咀嚼しきれないのです…

 

久しぶりにクラシックのコンサート行きたいなあってな気分になりました。生の楽器の音が聞きたい。